平成18年11月23日木曜日

 

シンポジウム2006~米国知的財産法の最新動向を探る(Ⅱ)~

DRIP(知的財産研究推進機構)主催のセミナー(11/20 東京會舘)に参加した。-cont'd

3. 独占禁止法と特許法-Recent Development in the U.S.-(Prof. Martin J. Adelman, The George Washington University Law School)
Monsanto Co. v. McFarling 459 F.3d 1328,1339(Fed. Cir. 2006)
 ScruggsはMonsanto(M社)の種子ライセンス契約は、反トラスト法(antitrust law)および特許の権利濫用(patent misuse)であると主張した。
 CAFC(連邦巡回区控訴裁判所,Court of Appeals for the Federal Circuit)の判断:
(1) M社の"no replant policy"(再育種禁止)は反トラスト法違反ではない。
 理由:Monsanto Co. v. McFarling 363 F.3d 1336(Fed. Cir. 2004)において、"identical policy"は有効であり、特許法下での権利の範囲内であると認められている。
(2) M社によって課された技術料は特許権の範囲内である。
(3) "no research ploicy"(開発禁止)などは特許独占(patent monopoly)の範囲である。

Schering-Plough v. FTC, 402 F.3d 1056,1067(11th Cir. 2005)
 最高裁は、FTCの強い反論に対してSchering-Ploughをレビューすることを拒否した。

Joblove v. Barr Labs., Inc, 429 F.3d 370(2nd Cir. 2005)


4. 特許法と独占禁止法の交差点(Mr. W. Stephen Smith, Morrison & Foerster)
(1) 特許法と独占禁止法
反トラスト法(antitrust law、独占禁止法)
  → 「不当な取引制限」及び「独占化」行為を禁止する。
パテントミスユース(patent misuse、権利の濫用)
  → 侵害の主張に対する抗弁、反トラスト法の要素ではないが、多くの裁判所がミスユースに該当するか否かを判断する上で反トラスト法の原則を適用している。
・Illinois Tool Works v. Independent Ink.
Supreme Court Of The U.S., Oct 2005  CAFC:04-1196(Fed. Cir. 2005)
 特許製品について、反トラスト法上市場支配力が推定されるか?
 最高裁判所の判断:特許が必ずしも特許権者に市場支配力を与えるものではないことを確認し、従って、抱き合わせについてのすべての事案において、原告は、被告が抱き合わせをする製品について市場支配力を有することを立証しなければならない。

(2) 特許が市場支配力を有するものであれば、抱き合わせは当然に違法か?
Jefferson Parish Supreme Court Of The U.S.
U.S. v. Microsoft(Current Case)
 Microsoftは「知的財産権を合法的に取得した場合には、その後に当該権利を行使したとしても反トラスト法上の責任が生じることなどありえない。」と主張した。この主張は、個人の財産を使用しても不法行為責任を問われることはないという主張以上に正しいことはない。(Speaker)
 → 特許法上の「独占」とトラスト法上の「独占」とは違う。

(3)最後に
・これまでの見解: 特許は法的な独占であるため、特許法と反トラスト法は緊張関係にある。
・今日の見解: 特許法と反トラスト法は、同じ究極の目的-消費者利益の促進-に資するものである。
(わが国の場合、特許法では「製造者の利益」も含まれるか?筆者)

 

シンポジウム2006~米国知的財産法の最新動向を探る~

DRIP(知的財産研究推進機構)主催のセミナー(11/20 東京會舘)に参加した。
1. Technology Knows No Boundaries; Does IP Law?(Hon. Randall R. Rader, Circuit Judge on the United States Court of Appeals for the Federal Circuit)
(1) Historic Standard:
  米国外での特許発明の実施は特許侵害ではない。
Deepsouth Packing Co. v. Laitram Corp., 406 U.S.518(Supremecourt of the U.S., 1972)
 侵害する製品を米国外で組み立てるための構成要素部分として輸出することによって,侵害者が米国特許侵害の責任を回避することが可能であったと判示。
・U.S.Patent Act(35 U.S.C.)§271(a) (f)(1):
 1984年、連邦議会がそのような行為を予防するために制定。その活動が米国内で行われていた場合に侵害することになるようなやり方でその構成要素が使用されるであろうことを意図して,あるいは知りながら特許発明の構成要素を輸出することを含めるように侵害の定義を拡大。

(2) NTP, INC. v. RESEARCH IN MOTION, LTD. 418 F.3d 1282(Fed.Cir. 2005)
 RIMは、NTPの特許発明(US 5,436,960)の構成要件の一部を米国外(Relayをカナダに)で実施。
 §271(f)(1)で問題となった項目;
 *特許発明の構成要素(Components)は"physical components"に限られるか?
 *"供給する(supplies)"には「海外でされたコピー」も含まれるか?
 *プロセス・クレームにも適用されるか?

(3) AT&T Corp. v. Microsoft Corporation
・地裁
 Microsoftは,Windows Rソフトウェア製品の国際的配給を促進するために,米国外コンピュータメーカーにソフトウェアのマスターバージョンを限定数供給した。マスターバージョンは,米国内で作成され,いわゆる「ゴールデンマスター」ディスクまたは電子的転送によって米国外に送られた。 米国外コンピュータメーカーは,Microsoft とのライセンス契約に基づき,多数のソフトウェアのコピーを作成した。このコピーは、米国外で組み立てられ,米国外の顧客に対して販売されるコンピュータにインストールされた。マスターバージョンには,コンピュータにインストールされたときに AT&T によって保有される特許発明にかかるソフトウェアプログラムが含まれていた。AT&Tは,Microsoftを訴えた。Microsoftは,ソフトウェアの米国外での販売は§271(f)に基づく米国特許の侵害を生じないと反論した。
 理由;
 (1)ソフトウェアは無形の情報であり,§271(f)に規定される特許発明の「構成要素(components)」になり得ない,
 (2)たとえ,ソフトウェアが構成要素に該当するとしても,米国外で組み立てられたコンピュータにインストールされたソフトウェアのコピーはすべて外国で作成されているので,271§(f)が要求する,実際の「構成要素」が米国から「供給」されていない。
 地裁は,Microsoftの主張を2つとも退けた。その理由として、(1)ソフトウェアの特許性は十分に確立したものであり,特許法は「構成要素」を有形の構造に限定していない,(2) §271(f)の目的は,輸出による侵害の回避を禁止するためであり,米国から送られたマスターバージョンから米国外で作成されたコピーは,271条(f)に基づく責任から保護されていない、と判示した。
MicrosoftはCAFCに控訴した。

・CAFCの判決 414 F.3d 1366 (Fed.Cir.2005)
 控訴審で,Microsoftは,地裁が§271(f)に基づく侵害の決定を誤ったと主張し,(1)複製を取るために輸出されたWindows Rソフトウェアのマスターバージョンは,§271(f)に規定される「構成要素」ではなく,(2)海外で作成されたコピーは,合衆国から「供給」されていないので,§271(f)に基づく責任は追わない,と主張した。CAFCは,次のように説明した。
 A. ソフトウェアは,35 U.S.C. §271(f)に基づく「構成要素(Components)」であると考えられる。
 B. 米国から輸出されたマスターバージョンから海外で複製されたソフトウェアは,35 U.S.C. §271(f)に基づいて「供給された(Supplied)」とみなされる。
 また、多数意見によれば,「特定事件の結果への不満の救済は,連邦議会の役目であり」,同裁判所の役目ではない。

(4) Union Carbide v. Shell Oil 425 F.3d 1366(Fed.Cir.2005)

2. e-Bay Inc. v. MercExchange, L.L.C.(Opinion of the Court:May 15,2006)(Mr. A. Max Olson, Morrison & Foerster)
 2006年5月、連邦最高裁:(1)特許侵害に対する終局的差止命令(Permanental Injunction)を当然のこととして指示する一般的なルールは存在しない。(2)特許事件における終局的差止命令を承認するか否かを決定するための伝統的な4要素基準の適用を確認した。
<4要素基準>
 1. 原告が回復不能な損害を被ったこと。
 2. 金銭的賠償等法律で規定されている救済法では、かかる損害を補償するのに不十分であること。
 3. 原告・被告双方が直面する困窮程度のバランスを考慮すると、衡平上の救済が正当化されること。
 4. 終局的差止命令によって公共の利益が損なわれないこと。
<本判決の影響>
 1. パテントロール(patent trolls)による特許ライセンスや和解交渉における交渉力が低下する。
 2. 侵害が認められた場合、差止命令が保障されているITC訴訟での興味が増大する。 (to be cont'd)


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