平成18年10月14日土曜日
情報の性質と自然法則
金沢工業大学大学院酒井宏明教授(酒井国際特許事務所所長)が、情報保護法としての役割を担う特許法のパラダイム・シフトの可能性を情報の性質と自然法則を題材として解説する。(上)[2005/09/08]、(下)[2005/09/13]
特許法2条1項の「自然法則の利用性」という概念は,固定された画一的な狭い範囲というものではなく,政策的な要因等により解釈の幅を変容させる柔軟性を持っている。すなわち時代背景に応じて,当該概念の持てる意味が許容される範囲内で,解釈によりある程度の拡張(あるいは縮小)させることは可能である(※1)。
ただし解釈の限界以上の対象を保護しなければならない状況になれば,法改正へと移行せざるを得ない。自然法則の利用性という概念を規範的に解釈し,可能な限り広い範囲の発明概念を認めたとしても,解釈論の範囲で自然法則を利用しないと解される「もの」は,特許法で保護することができない。
(※1)中山信弘「財産的情報における保護制度の現状と将来」岩波講座現代の法10(1996)