平成18年9月15日金曜日

 

特許製品のリサイクルと特許権侵害

判例や論文Web情報でレビューした。
平成12年6月、8月にリサイクル製品と特許権侵害の成否が使い捨てカメラのリサイクルに関する東京地決H11年(ヨ)第22179号東京地判H8年(ワ)第16782号で判断された。インクカートリッジ(写ルンです)事件において、「カートリッジの耐久性は十分長くインクを費消したことがインクカートリッジの寿命とはいえず、インクを充填する行為は、生産ではなく、修理に該当し、特許権を侵害しない。」と判断した東京地裁に対して、知財高裁は大合議にて侵害と判断した(H17年(ネ)第10021号、原審・東京地裁H16年(ワ)第8557号) 。
知財高裁は、(ア) 当該特許製品が製品としての本来の耐用期間を経過してその効用を終えた後に再使用又は再生利用がされた場合、又は(イ) 当該特許製品につき第三者により特許製品中の特許発明の本質的部分を構成する部材の全部又は一部につき加工又は交換がされた場合には、特許権は消尽せず、特許権者は、当該特許製品について特許権に基づく権利行使をすることが許されるとし、特許製品に施された加工又は交換が「修理」であるか「生産」であるかにより、特許権侵害の成否を判断すべきでないとの考えを示した。
一方、米国ではCAFC(連邦巡回区控訴裁判所)が使い捨てカメラについて、リサイクルする行為は「修理」にあたり、リサイクル製品に対しては特許権を行使することができないとした(Jazz Photo Corp. v. ITC, 264 F.3d 1094 (Fed. Cir. 2001))。米国では、この判決の存在により、使い捨てカメラのみならずインクカートリッジ等のリサイクル市場が確立されている。
純正品しか存在しないわが国においても、例えば使い捨てカメラについてはリサイクルを行っており環境面の配慮はされてはいるが、全体のリサイクル率は低くなり、消費者の購入価格は高くなっているであろう。
文献:
・ 「使い捨て特許製品を再利用する行為に特許権の効力が及ぶか」来栖和則(パテント2002 vol.55 No.3
・ 「知っておきたい主要判決」倉内義明(パテント2002 vol.55 No.6
・ 「消尽論と修理/再生産理論に関する日米の判例の状況」上山浩・西本強(パテント2005 vol.58 No.6
・ 「特許と修理」弁護士 大西千尋
・ ブログ「NY研修で人生変わった弁理士の日記」

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